[作品タイトル] 剣の少女〜気高き恋の歌〜 [コンセプト] 凛とした女性ヒロインと"王子様"の恋物語。 強くあろうとするヒロインを、包み込み、支えようとする攻略対象たちとの交流を描く。 [あらすじ] 領地を巡り戦争を繰り広げたのも今は昔。 平和になり、仕事以外すっかりすることのなくなってしまった貴族たちは互いの誇りを賭け「決闘」という「遊戯」を繰り広げていた。 戦うのは己ではなく、「持ち物」である「執事」や「メイド」たち。 どれだけの力を従者たちに振るわせられるか。 またどれだけの教育を施せるか。 自尊心を満たすために繰り広げられる「決闘遊戯」 主人公は、王国で二大公爵と称えられる家の「剣」の1本だった。 幼いころ、孤児だった自分を救い上げてくれた公爵家に報いるため、剣として生きてきた少女。 秋がめぐり、再び始まる決闘遊戯に、彼女はまた何の疑問もなく身を投じる…はずだったのに。 「君は本当に幸せなのかい?」 投げかけられた言葉が彼女を揺らがせる。 「私」とは一体なんなのだろう、と。 <主人公> アリア 一人称「私」 「公爵家の剣」の1本にして、「宝剣<ビジュー>」と呼ばれる少女。 普段はヴァルツァリエ公爵家にてステラの護衛を勤めているが、遊戯になれば決闘場に狩り出される。 物心ついた頃から孤児で、公爵家に拾われて以来、公爵家のために生きてきた。 そのため、少女らしさもあまりなく、武器としてあることを最優先している。 並みの男では太刀打ちできない剣術の持ち主で、決闘遊戯でも常に勝利をもたらしてきた。 しかし今回、さまざまな要因で自身の有り様を揺るがされることになる。 <守るべき対象> ステラ=ヴァルツァリエ 一人称「わたくし」 ヴァルツァリエ公爵家令嬢。アリアと年が近く、彼女を親友と公言してはばからない。 大人しく、誰に対しても優しいが、芯は強くやや頑固。 自身の未来が公爵家の政略の道具になることを知っており、あるところでは諦念めいたものを持っている。 かたくななアリアに対して、少女らしさ、可愛らしさを求めて着せ替え人形にすることもある。 <主人>※攻略対象 ネロ=ヴァルツァリエ 一人称「私//俺」 公爵家嫡子にして時期跡取り。既に元老院入りし、政治の世界に身をおいている。 貴族社会のお遊びをどこか馬鹿にしつつも、「家を保つため」ならばと決闘遊戯に参加。 主人公を従えている(決闘遊戯自体が舞踏会のような、社交場的意味合いを持つため) 白の公爵とよくよく対比され、黒の公爵と呼ばれる。 誇り高さと、幼い頃から叩き込まれた処世術・帝王学のせいでかなり人間味が薄く、完璧主義者。 優しさや人とのつながりは弱さと思い込んでいる節がある。 が、今回の件で主人公の涙を見、初めて、彼女を人間として捉えるようになっていく。 <異国の求愛者>※攻略対象 アリー・ナスル=ワッハーブ 一人称「己(オレ)様//己(オレ)」 アリアを見初め、彼女に対し「本当に幸せなのか?」と問いかけた、南方砂漠地帯の大貴族。 国際交流のために貴族社会にやってきて、すっかり染まってしまった放蕩人。 奔放な性格で美丈夫、わがままで傍若無人、面白いもの好きのため、付き人を困らせてばかりいる。 思い通りにならないアリアを追い掛け回し、いつしか本気で花嫁にしたいと思うようになった。 剣の腕がすこぶるたち、決闘遊戯では珍しく自身が出陣する。 <異国貴族の付き人> サディク=ハイダル 一人称「俺」 アリーの一族が所有する「盾」の一族。 見かけは少年だが、主人のアリー以上に腕が立ち、迷いがあったといえどもアリアを退かせるほど。 明るく元気で、何事にもめげない。 口はとにかく悪いが主人大好きっこのため、主人公には容赦がない。 が、最終的には主人の幸せのために、二人の行く末を応援していくようになる。 <白の公爵>※攻略対象 レクス=シュトルツアス 一人称「僕」 金の髪に青の瞳、貴族社会でも「完全無欠の王子様」と女性たちから評判の的の白の公爵家嫡子。 ネロ同様に元老院入りし、執政官を勤めているが、実はばりばりの武闘派。 決闘遊戯に参加したかったが、なかなか機会に恵まれず、我慢していたらしい。 今回、とうとう押し切って参加。 穏やかで優しい分、怒りが向けられたものへの反動が大きい。 ネロとは幼いころからの顔見知り。 同年代であるため、ネロと友人になりたいと思っているが、性格上うまくいっていない。 アリアにはその頃に出逢い、一目惚れしていた。 *共通ルート 巡る季節。訪れる決闘遊戯のシーズンに、今回も勝利を収めるようにと当主から言いつけられるアリア。 ヴァルツァリエ公爵家のためにと決意を新たにするアリアだが、参加する主――ネロの表情は動かない。 ネロは、義務で参加するのだとアリアに冷淡に接する。 そんなネロを冷たいとステラは言う。が、アリアは私は公爵家の剣であればいいと語る。 必要な時に使ってもらえればそれでいい、と。 そんな彼女にステラは困惑を見せるのだった。 訪れた決闘遊戯の開始日。 レクスとネロが合流し、アリアが独りで控えていたところ、見知らぬ男がやってくる。 馴れ馴れしく声をかけ、しつこく誘ってくる男にたまらず剣を向けるアリア。 しかし男は軽やかにそれを避け、また後で会おうと言い、去って行った。 その後に開催されたパーティ。 ネロに伴われて参加するアリアの前に先程の男が現れる。 注目を集める派手な風貌のその男はアリー。 南方砂漠地帯の大貴族で、今回の決闘遊戯に参加すると言う彼は、アリアが欲しいとネロに迫る。 意味が分からないと突っぱねるネロを、挑発するアリー。 騒ぎになりかけた二人をレクスが仲裁し、その場は事なきを得たが 「君は本当にそのままでいいのかい?」と投げかけられた問いかけがアリアを動揺させる。 ヴァルツァリエ公爵家の剣であることに変わりはないと、決闘遊戯に挑むアリア。 しかし、初戦で当たったアリーにあっさりと負けてしまう。 初めての敗北に打ちのめされるアリア。 自分には剣であることしか価値はないのにと嘆く彼女は、そこで初めて その存在意義以外己には何もないことに気づき、生まれて初めてネロの前で涙を流すのだった。 *ネロルート「剣の少女」 打ちひしがれるアリアを、ネロは衝動的に抱き締めてしまう。 抱擁に戸惑うアリア。ネロもまた、なぜ自分がそうしたのか分からぬまま彼女を突き放し、去ってしまう。 帰還後、敗戦を当主に責められるアリア。 今シーズンの決闘遊戯は別の「剣」にとらせると通告され、彼女は役目を下ろされてしまう。 そんなアリアの下へ、アリーがやってくる。 アリアが欲しいと笑うアリーは彼女を無理やり外へ連れ出し、着飾らせ、あちこち連れ回す。 何も知らないアリアは戸惑いと共に小さな喜びを覚えたが、思い出すのはネロのこと。 自分は彼の「公爵家」の次期当主としての面しか知らないことに気づく。 ネロに会いたいと悩むアリアに、アリーは踏み出してごらんと笑いかける。 何故自分によくしてくれるのかと問うアリアに、アリーはやはり「"君"が欲しいからだよ」と告げるのだった。 自分とはなんなのか。そんな問いかけと共に思うのはネロを知りたいという願望。 アリアの自発的な願いを、ステラが手助けをする。 兄の護衛とアリアを交代させ、二人の距離を縮めようと試みたのだ。 アリアの姿に眉をひそめたネロだが、彼は何も言わず淡々と仕事をこなしていく。 言葉少なだが、ネロの傍にいることに落ち着きを覚えるアリアは、やはりこの人が自分の主なのだと思い知るのだった。 そしてネロもまた、アリアの前で無防備な姿を見せる。 落ち着く、アリアが傍にいることが当たり前だと告げられて、アリアは嬉しく思うのが、果たして剣でない自分に価値があるのかどうか、分からない。 そう問いかけるアリアに、ネロもまた答えを持てずにいた。 そして問い返す。"お前はいったい何者なのだ"と。 分からぬアリア。そんな折、再びアリーがやってくる。 かつての「"君"が欲しいからだよ」という言葉を思い出し、私とはなんなのか、問いかけるアリア。 アリーは笑って、彼女を再び連れ出す。 剣でもない、従者でもない。小さなことに喜びを覚え、はにかむ君こそが他でも君なのだというアリー。 君には今までそれがなかったのだと突き付けられ、自分ならばアリアを一人の女の子として愛してあげるという。 それでもなお浮かぶのはネロの顔。ネロの剣であることの喜び。 自分はネロの傍にいたい、と願いを告げるアリアを、アリーは無理矢理抱き締める。 抗うアリア。しかし、その光景をネロに見られてしまう。 レクスに敗北し打ちひしがれていたネロは激昂し、彼女をアリーに"くれてやる"と告げるのだった。 ネロに捨てられ、呆然となるアリア。 処し方も分からず、アリーの下に身を寄せるアリアはレクスと再会する。 なんだか変わったね、と笑うレクスにどういう意味か問いかければ「守るべき人を見つけたんだろう」と告げられる。 昔はただ義務だった。でも今は、守りたいという気持ち、心がある。 そう告げるレクスにアリアはいてもたってもいられず、ネロの下へ駆け出すのだった。 屋敷に辿り着けば、使用人たちにあたる、荒れるネロがいた。 感情をあらわにするネロとアリアは対峙する。 「私は私。他の誰でもない、貴方の剣」 ためらいなく告げる彼女を、ネロは再び抱き締める。 「お前にどう接していいか分からない。お前が愛しくて仕方がないのに、私にはお前に出来ることがない」 アリーに嫉妬したのだと、語るネロ。だが、公爵家の次期当主しか自分にはない。 何もしてやれないというネロにアリアも自分も同じだと語る。 貴方の剣である以外に道はない。けれど、そこには心がある、意志がある。 そう語るアリアにネロもまた、そうか、私たちは同じなのか、と頷き、お前を愛しいと思う心があると告げるのだった。 そして、アリアを伴い決闘場へ向かうネロ。アリーを見つけた彼はアリアを取り戻すための決闘を挑む。 他でもない自分が戦うと告げるネロを嗤うアリー。 アリアですら叶わなかった自分に勝てるのか、と告げるアリーにネロは勝つ、と告げた。 他でもない、自分の剣を、宝剣を取り戻すために。 そして行われる決闘。アリーに苦戦するネロだったが、最後の最後に「アリアを愛している」と告白し、決闘を制するのだった。 帰ってきたアリアを、二度と離さないというネロ。 アリアもまた、ネロを守り続けると誓うが、ネロは「私もまたお前を守る」とその指に、誓いの指輪を贈るのだった。 そして迎えるレクスとの再戦。 立ちはだかるレクスにも、もはやアリアは怯まなかった。 迷いなく剣を握りしめ、ネロのために戦い――そして、勝利するのだった。 *アリールート「誇り高く、美しく」 敗北に打ちひしがれるアリア。帰還後、敗戦を当主に責められて任を下ろされてしまう。 自分には剣であること以外何もないのにと絶望するアリアの下へ、アリーがやってくる。 アリアが欲しいと言うアリーは、彼女を無理やり外へ連れ出し、着飾らせ、あちこち連れ回す。 ネロとは違うアリーの接し方に、戸惑うアリア。 何故自分によくしてくれるのかと問うアリアに、アリーはやはり「"君"が欲しいからだよ」と告げる。 意味の分からない言葉に、自分を愚弄するのかと抗うアリア。 しかしアリーは何も言わず笑うばかり。 その眼差しがただ悔しくて、アリアは強くなることを誓う。必ず貴方に勝つ、と。 アリーはその言葉に頷き――アリアの唇を奪うのだった。 屋敷に戻ったアリアはステラの心配をよそに過酷な鍛錬を続ける。 肉体を苛め抜くような訓練を続ける彼女に、ネロもまた心配げな視線を投げかけるが彼女はひたすらに 「剣」として復帰することを目指していた。 しかし、ことごとく頭によぎるのはアリーの顔、アリーの口づけ。 初めてのことに訓練もままならず、ついには怪我をしてしまう。 休養を告げられ、苛立つアリアの前に姿を見せるアリー。 彼女の見舞いに来たというアリーは、ことさら優しくアリアを扱う。 その優しさが自分を惨めにさせるとアリアは抗うが、そんなアリアを、アリーが抱き締める。 君が欲しいとまた言葉を降らせるアリーに、貴方の欲しい私とはなんなのか、問いかけるアリア。 アリーは言う。 剣でもない、従者でもない。 こうして、優しさに甘えることに憤り、再び勝利を誓う、強く誇り高い君こそが他でも君なのだと。 かつて決闘場で見た美しさが忘れられない。そんなアリアを、一人の女の子として愛したいと。 そうして、問いかける。今君は、誰のために剣を振るっているんだい、と。 思いがけない問いかけに、アリアは戸惑う。 ヴァルツァリエ公爵家の剣だったはずの自分。しかし、アリーへの闘志は公爵家とは無関係であることに気づく。 証拠に、自分がいなくともネロは決闘遊戯で順当に勝利を収めているではないか。 もはや剣としての自分は不要ではないのか。なら、どうすればいい。 戸惑う彼女は、気分転換にとステラに外に連れ出される。 そこでアリアは、大勢の女性をはべらせながら愛の言葉を囁くアリーと鉢合わせる。 今までの言葉は何だったのか。からかわれていただけなのか。 やはり愚弄しただけだったのだとアリアは涙を零してしまう。 そんなアリアを慰めるステラ。涙するアリアに「彼のことが好きなのね」と告げる。 それこそが「恋」なのだというステラに戸惑うアリア。 しかし、拒絶できない思いがあることに気づかされる。 「それこそが、今までずっと貴女に以て欲しいと求めていたもの。公爵家だけに囚われず、もっと自分の心を大切にして」 優しいステラの言葉に、アリアはただ頷くのだった。 アリーを愛する自分に気づくアリア。しかし、剣としての己を否定することも出来ない。 私は誰のために剣を振るうのか。 そんな折、アリアはアリーの従者、サディクと出会う。 主人が嘆いている、慰めてやってくれと愚痴るサディクに――ふと、アリアはどういうつもりで彼の傍にいるのか訊ねる。 彼のためにすべてを捧げるのか、と。 しかしサディクは「あんなバカのことなんて知るか」と冗談交じりに吐き捨てた。 街中で女性をはべらせるのも単なる娯楽で、そういう馬鹿なんだ、とサディクは言う。 けれど、彼が好きだから、彼のために剣を振るっているのだと告げる。 単純な答えにアリアもまた、己の中に答えを見出す。 そして、公爵家に帰ると、再び剣として使ってくれるように当主に頼み込む。 自分を拾ってくれたヴァルツァリエ公爵家のために、ネロのために、今度こそ戦いたいと。 渋る当主を説得したのはネロだった。彼女を信じてやってくれ、と。 そうして、再び戦う権利を得たアリアに、ネロは言う。「お前こそが私の剣だ」と。 そんなネロにアリアも微笑むと「貴方だけが私の主。だからこそ、貴方と戦いたいと思うのです」と返した。 再び訪れた決闘場。そこではサディクが戦っていた。 アリーのために捧げる強い剣に、感動を覚えるアリア。だが、負けはしないと剣を握り、戦うことに。 当然のごとく納められる勝利。その姿を、アリーが見ていた。 強く凛々しい姿を美しいというアリーに、アリアは剣を向ける。 今再び、貴方を超えるために決闘を申し込む、と。 反発するサディク。しかし、アリーは申し出を受け入れ、二人は決闘をすることに。 剣をぶつけ合う二人。そして、アリアは最中に想いを吐露する。 散々人を振り回しておいて、どういうつもりだ。本気にさせた責任を取ってくれ。 貴方が、私にとっての初めての恋なのに。 そう詰め寄る彼女にアリーは剣を捨て、アリアを強く抱きしめる。 そんな告白をされたらたまらない、と降参するアリー。 もう二度と君以外を見つめないと囁くアリーは、彼女を抱き上げ、いつか花嫁にすると誓うのだった。 *レクスルート「王子様との恋」 敗北に打ちひしがれるアリア。かける言葉を持てないネロといるところへ、レクスがやってくる。 迷いがあった、あれは君の剣ではないというレクスの言葉を不思議に思うアリア。 私の剣とは何を言うのか、どういう意味だと尋ねる彼女へ「君は本当は強い人だ」と告げるレクス。 一度の敗北でどうか膝を折らないでほしい、と言う優しいレクスの言葉に涙をこぼしてしまうアリア。 そんなアリアをどこか苛立ちの眼差しで見つめながら、ネロは屋敷に帰還する。 帰還後、敗戦を当主に責められて任を下ろされるアリア。 自分には剣であること以外何もないのにと落ち込む彼女の頭に響いたのは何故かレクスの言葉だった。 ネロの知人、としか彼を知らない。そのことに何故だか寂しさを覚え、アリアは決闘場へと向かう。 決闘場では、レクスが決闘の真っ最中だった。 驚くほど真っ直ぐな剣に、見惚れるアリア。 彼の剣は「こうなりたい」と描いた、アリアの理想そのものだった。 訓練に励むアリアの脳裏に浮かぶのは、鮮やかなレクスの剣。 もう一度会えたら、と願うアリアの下へ姿を見せたのはアリー。 アリアが欲しいと笑うアリーは彼女を無理やり外へ連れ出し、着飾らせ、あちこち連れ回す。 レクスの剣に近づきたいと思う彼女はアリーを拒むが、アリーは聞き入れない。 困った彼女を助けたのは、またもやレクスだった。 彼女を困らせるならと決闘も辞さないレクスの気配に、アリーは苦笑しながら退散する。 「とんだ王子様もいたものだ」と。 戸惑いながら礼を言うアリア。礼なら、とレクスはアリアを自らの屋敷へ誘う。 花咲き誇る庭でお茶を馳走になるアリア。 穏やかな時間。同じ公爵家でもネロとは違うのだなと笑うアリアの顔を、レクスは愛しそうに見つめる。 どうしてそんな顔をするのか。私は貴方のことを知らないのにと問うアリアにレクスは 「僕は"君"のことをずっと見ていたから」と答え――アリアとの出会いを語る。 ネロがアリアを助けた日。自分も隣にいた。ネロと違って君に何も出来なかった自分が悔しくて。 ――だから守れなかった君のために強くあろうとしたのだとレクスは語る。 君を助けられなかった自分を後悔したから、と。 もし自分が君を助けられていたならネロのようには扱わなかったと強く告白する彼にアリアは喜びを抑えきれなかった。 自分を、見てくれている人がいた。自分のために、強くあろうとしてくれる人がいた。 剣でしかないと思い込んでいた空っぽの自分を幼いころから大切に思ってくれていた人がいたと喜ぶアリア。 もしも、レクスと出会っていたなら自分は何か変わっていたのだろうか。 そんなアリアの考えを、ネロが打ち砕く。 どこか苛立つネロは再びアリアを剣として選び、決闘遊戯に連れ出す。 剣を取ることに戸惑うアリア。ネロへの、ヴァルツァリエ公爵家への忠義は変わらない。 けれど、レクスとの出会いで、揺らぐ自分がいる。 そんなままで剣をとっても、またネロに恥をかかせてしまうのでは。 そうためらうアリアにネロは、「お前は"俺"の剣なのだろう?」と強要の言葉を突き付ける。 私はやはり剣でしかないのか、愕然とするアリアをすくったのはレクス。 彼女をそんな風にしか扱えないのなら僕がアリアを自由にする、と手袋を叩きつけるレクス。 「今度は僕が君を助ける」と告げるレクスに、ネロは決闘を受けて立つのだった。 決闘前夜、ネロの自室に呼ばれたアリアは、ネロの感情の吐露を聞く。 人とつながることは弱いことだ、優しくすることもそう。だから、お前が傷ついているのを知っていても、俺は何も言えなかった。 けれど、レクスは自分に出来ないことを容易くする。そんな奴に大切な、かけがえのないお前を渡すことは出来ない。 嫌だ、と子供のように感情を吐き出すネロにアリアは、ネロもまたレクスのように自分を見ていてくれたと知る。 そして、ネロこそが空っぽだった自分に存在意義を与えてくれていた人なのだと。 熱くなる鼓動を抑えられず、外に出たアリアは、そこにレクスの姿を見つけた。 眠れなくて、と子供のように笑うレクスはやがてアリアの前で跪く。 明日の決闘で必ず君を自由にする、と誓うレクス。 そして、叶うなら君と共にいたいと告げる。出逢ったあの日からずっと君が好きだった、と。 真っ直ぐな言葉。理想の剣技にも似た、強い言葉にアリアは震える。 与えられる二つの愛に揺らぐアリア。 何も言えない彼女にレクスは答えは、明日の戦いが終わった後に聞くと告げ、立ち去るのだった。 そして始まった決闘。ネロの言葉にも、レクスの言葉にも、答えを出せぬまま観戦するアリアの下を訪れたのはアリーだった。 どっちに勝ってほしい?と試すような物言いのアリー。 答えられないアリアに出逢った日と同じ言葉を突き付ける。 「君は本当にそれでいいのか」と。"君"はどうしたい?と。 剣でない、一人の女の子として、どうしたいと。 剣でない自分がいることをレクスとの出会いで知ったアリアは――答えが決まったとアリーに告げる。 そのアリアの瞳にアリーは笑うと「それでこそ、己の好きになったお嬢さんだ」と背中を押すのだった。 決闘場へ降りると、そこではネロとレクスが強くぶつかっていた。 互いの感情をぶつけ合う二人を見守るアリア。 やがて、アリアがいることに気づいたレクスは言う。 「君は己の立場に甘んじて彼女に守られているだけだった。でも僕は違う。 彼女は強い剣だけれど――本当は、弱いところもある、一人の女の子だ。僕はそんな彼女を守れる者でありたい」と。 そして、ネロの剣をはじくのだった。 ついた決着。アリアの下へやってくるレクス。跪いてアリアの手を取るレクスに、アリアは 「それでも、私はヴァルツァリエの剣だ」と言う。 「貴方が愛してくれた、強い私でいたい。貴方の剣が守るにふさわしい私でいたいのです」と。 そう告げるアリアにレクスは微笑み 「君が選んだことならば僕は何も言わない。君が幸せならば僕も幸せだよ」 とった手のひらに口づけるのだった。